表紙に日置美緒の金継ぎ作品、記事に書籍や活動についての特集記事が掲載されました。
2021年に出版した書籍 環(たまき)ー金継ぎのかたりべ ー著・日置美緒 / Kintsugi in the cycle of nature - a meditation on Japanese lacquer arts - Written by Mio Heki についてKYOTO JOURNL様より記事になりました。
書籍を作るに至った経緯や、本作り、漆や金継ぎに対する思いなどを取材していただき丁寧に記事にしてくださりました。
表紙は、Venini社 Esagonaleエザゴナーレ
Veniniはイタリア.ムラーノ島のガラスメーカーでかの有名な世界的建築家であるカルロ・スカルパ氏のデザインしたベネチアングラスの金継ぎ修理
京都の建築家・竹内誠一郎さんからのご依頼で、イタリアと師匠と尊敬する建築家の大切な思い出の詰まった大切なグラスが割れてしまいなんとか直らないだろうかというご相談でした
カルロ・スカルパは東洋的・日本的な美意識を建築の中に取り込んでいて、金継ぎで器を再構築する中でそういったスカルパの繊細な美意識や思想的な部分も込められないかというもので
金継ぎでは様々な漆芸技法をいかしてお直しすることができるため、スカルパの職人とその技術、特に素材に対する向き合い方をグラスの中で表現できないかと色々思案しながら直す時間はとても幸福なもので。
貝を嵌め込んだりしようかとも色々なアイデアや素材と睨めっこしながら向き合っていました。
しかし、数ヶ月グラスを見つめ辿りついたのはベネチアングラスのゆらめく飴色のグラスを活かしたいということひとつ。
素材と金継ぎの有機的な曲線。ゆらめく面、赤い六角形、内と外、空間、光の透過。
悩みなやんだ結果、漆で接着し、漆のみの積層で傷を繕っていき、内側を純金で外側を漆そのものの透けた飴色で飾りました。
中も外も金という選択肢もありましたが、ガラスの裏表の色をかえることで、より空間、建築的な表現として。
金継ぎの複雑なラインをみせるよりも、ガラスそのものの外と中と外が見えること、またデザインされたグラスの多面制を魅せたかった。
存在している空間がシンプルに立ち上がったのではないかと思います。
こうして遠い国からやってきた美しいグラスが、出逢い、時を経ながら持ち主の方とまた新しい時を過ごしていくのだと思うと幸せです。
Kyoto Journalの表紙も飾らせていただいたこちらのグラス
後日談として、グラスが割れた経緯などもお聞きして「何とも奇妙な縁をもった器」ということで竹内さんとも笑ってお話したのでした。
素敵なご縁を有難う御座いました。
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